3大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)とは異なり、熱やエネルギーにはなる栄養素ではありませんが、ビタミンとミネラルは、微量栄養素と呼ばれ、わずかな量で役割を果たす大切なものです。その役割について説明します。
ビタミンの特徴
吸収されたほかの栄養素の働きの効率を高めたり、体調を整えたりといった潤滑油のような働きをします。
ビタミンは有機化合物ですが、体内では合成できないものあるため、食物から摂取することが欠かせません。不規則な食生活をするとビタミンが不足し、欠乏症を引き起こすことがあります。また、十分に摂っていても、効率よく吸収されないということがあります。
最近では、さまざまなビタミン剤が市販されています。しかし、頼りすぎると、ビタミン不足を補うという目的のはずが、逆に、過剰症になる心配が出てきます。ビタミン剤は、十分に注意し、正しく活用するようにしましょう。
現在、発見されているビタミンは、13種類です。次のとおり、脂に溶けやすいものと水に溶けやすいもので、2つのグループに分けられています。
①脂溶性ビタミン:脂に溶けやすいもので、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類です。
ビタミンA
特性:成長を促進する、皮膚・粘膜・視力・目の角膜を正常に保つ。
多く含む食品:レバー、ウナギ、緑黄色野菜、バター、卵など
おもな欠乏症:夜盲症、角膜乾燥症、発育不全
ビタミンD
特性:カルシウム・リンとともに骨や歯をつくる、筋力を維持する。
多く含む食品:サケ、カレイ、キクラゲ、干しシイタケなど
おもな欠乏症:くる病、歯や骨の発育不全、骨粗鬆症
ビタミンE
特性:発がんを抑制する、老化を遅らせる、血管を強化する。
多く含む食品:アーモンド、コーン、油、胚芽など
おもな欠乏症:溶血性貧血、不妊
ビタミンK
特性:血液を凝固させる。
多く含む食品:納豆、ヒジキ、緑黄色野菜など
おもな欠乏症:頭蓋内出血、血が止まりにくくなる。
②水溶性ビタミン:水に溶けやすいもので、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビオチンCの9種類です。
ビタミンB₁
特性:成長を促進する、心臓の機能を正常に保つ、食欲を増進する。
多く含む食品:豚肉、ウナギ、豆類など
おもな欠乏症:脚気、食欲不振、神経障害
ビタミンB₂
特性:成長を促進する、粘膜を保護する、動脈硬化を予防する。
多く含む食品:ウナギ、レバー、アーモンド、卵など
おもな欠乏症:口角炎、口唇炎、口内炎、皮膚炎、成長障害
ビタミンB₆
特性:アミノ酸の代謝を促進する、皮膚の健康を保つ。
多く含む食品:マグロ、サンマ、サケ、バナナなど
おもな欠乏症:皮膚炎、口内炎、手足のしびれ、成長障害、貧血
ビタミンB₁₂
特性:成長を促進する、貧血を予防する、赤血球の生成を助ける。
多く含む食品:アサリ、レバー、カキ、サンマ、タラコなど
おもな欠乏症:悪性貧血
ナイアシン
特性:血行をよくする、脳神経の働きを助ける。
多く含む食品:酵母、魚、レバーなど
おもな欠乏症:皮膚炎(ザラザラした皮膚になる。)
パントテン酸
特性:善玉コレステロールを増やす、免疫力を強化する、糖質や脂質を分解する。
多く含む食品:レバー、納豆、落花生など
おもな欠乏症:血圧低下、副腎機能低下、成長障害
葉酸
特性:貧血を予防する、皮膚の健康を保つ、病気に対する抵抗力をつける、造血の働きがある。
多く含む食品:レバー、肉類、大豆、サツマイモ、卵など
おもな欠乏症:大赤血球性貧血
ビオチン
特性:白髪や抜け毛を防ぐ、皮膚の健康を保つ。
多く含む食品:レバー、イワシ、卵、クルミなど
おもな欠乏症:皮膚炎、食欲不振
ビタミンC
特性:コラーゲンをつくる、血中コレステロール値を下げる、肌に潤いと張りを与える。水に溶けやすく、熱に弱い。
多く含む食品:柑橘類、緑黄色野菜、サツマイモなど
おもな欠乏症:壊血症、疲労感・脱力感、出血、色素沈着
ミネラルの特徴
ミネラル
私たちの身体は、体重の95%が酸素、炭素、水素、窒素という4つの主要元素からできていて(有機化合物)、残りの5%がミネラル(無機質)でできています。必須の元素ですが体内では合成できないため、食物から直接摂取しなければなりません。
ミネラルは身体の構成部分となったり、身体の調子を整えるといった重要な働きがあります。ビタミンと同じような働きをもっていますが、ミネラルは無機質であり体内ではまったく合成できない元素であること、身体の構成成分となることが異なります。
ミネラルは、約40種類あります。次のとおり、役割によって、大きく2つに分けられます。
①身体の構成成分になる
カルシウム、リン、マグネシウムなどは、骨や歯の構成成分になります。また、鉄、亜鉛などは、筋肉、血液、神経、臓器の構成成分になります。
②身体の調子を整える
ナトリウム、塩素、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどは、生体機能を調節します。血液・体液のpH(ペーハー:酸性であるかアルカリ性であるかを示す単位。7は中性、7より小さい場合は酸性、7より大きい場合はアルカリ性。)や浸透圧(膜を通して濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に溶媒が移動するように働く圧力のこと。)を正常に保ち、神経や筋肉に刺激を与えて身体の働きを調整します。また、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛などは、酵素反応を手助けします。エネルギーをつくる酵素・皮膚や臓器の新陳代謝(身体のなかの古い細胞が新しい細胞に取ってかわること)の働きを促進する酵素の成分となったり、体内での化学反応を活性化させる酵素の働きを助けます。
カルシウム
特性:骨や歯を形成する、精神を安定させる、血液を固めて出血を防ぐ。
多く含む食品:小魚、牛乳・乳製品、海藻など
おもな欠乏症:神経過敏、イライラ、不整脈、骨粗鬆症、筋肉の痙攣・つり
リン
特性:骨や歯を形成する、エネルギーを蓄える、細胞膜を形成する。
多く含む食品:ワカサギ、乳製品、煮干し、加工食品など
おもな欠乏症:歯槽膿漏、骨が弱くなる、筋肉の動きが悪くなる。
イオウ
特性:皮膚・爪・髪を形成する、タンパク質(アミノ酸)の構成要素となる。
多く含む食品:チーズ、卵など
おもな欠乏症:爪がもろくなる、皮膚炎
カリウム
特性:血圧を正常に保つ、腎臓の老廃物の排泄を促す、筋肉の動きをよくする。
多く含む食品:干し柿、インゲン、枝豆、納豆など
おもな欠乏症:血圧の上昇、不整脈・心不全を起こしやすくなる、夏バテしやすくなる。
ナトリウム
特性:カリウムとともに細胞の浸透圧を維持する、神経に刺激を伝達する。
多く含む食品:食塩、コンソメスープの素など
おもな欠乏症:脱水症状、熱中症、血圧が低下、腎臓が弱くなる。
マグネシウム
特性:精神を安定させる、体温や血圧を調整する、心臓の筋肉の動きをよくする。
多く含む食品:アーモンド、カシューナッツ、大豆、落花生、納豆など
おもな欠乏症:イライラ、不整脈・心臓発作を起こしやくなる。
鉄
特性:成長を促進する、疲労を防ぐ、ヘモグロビンの成分となる(タンパク質・ビタミンCとともに摂取すると吸収がよくなる)。
多く含む食品:レバー、魚介類、ホウレンソウ、小松菜など
おもな欠乏症:貧血、集中力の低下、思考力の低下、肩・首のこり
亜鉛
特性:味覚・嗅覚を正常に保つ、ビタミンCとともにコラーゲンを合成する、性能力を維持する。
多く含む食品:カキ、レバー、ホタテ貝など
おもな欠乏症:情緒不安定、味覚異常、髪が抜けやすくなる。
マンガン
特性:骨の形成に必須となる、疲労を回復する。
多く含む食品:玄米、大豆、アーモンドなど
おもな欠乏症:疲れやすくなる、平衡感覚の低下
ヨウ素
特性:成長を促進する、甲状腺ホルモンをつくる。
多く含む食品:昆布、ワカメ、のりなど
おもな欠乏症:甲状腺腫、機敏さがなくなる、疲れやすくなる。